「神童、ボタンが取れそうだぞ」

 部活が終わり、ロッカー室で着替え終わった頃。神童は突然霧野にそう言われた。
 指さされた部分を見ると、制服の第二ボタンが取れかかっている。鞄を肩から斜めにかけるとどうしても当たってしまうところだった。

「本当だ。直さないと……」
「直してやろうか」
「えっ?」

 横から三国が声をかけてくる。思わず驚いた声をあげると三国は自分の鞄の中を漁りはじめた。
 そしてあったあった、と言うと、手の中には簡単な裁縫道具の詰まった箱が。

「三国、お前……」
「女子かよ……」
「あると便利だろ」

 三国の横で天城と車田が顔をひきつらせている。だが三国はあっけらかんとしていた。そうして裁縫道具を持って神童を見てくる。

「すぐ終わるし。俺で良かったら直させてくれないか?」
「あ、は、はい」

 言われた通りに、今しがた着たばかりの制服をもう一度脱いで三国に渡す。裁縫道具を広げたところで、霧野が神童に声をかけた。

「神童、今日は俺先に帰るな。車田さんと天城さんも一緒に帰りませんか?」
「ん? そうだな、そうすっか、天城」
「だド。お先するド、三国、神童」

 きっと霧野が気を使ってくれて、そう言ってくれた。車田と天城は霧野のそんな思いには気づいていないのだろうが一緒に帰って行った。
 とたんにがらんとしたロッカー室で、裁縫道具を広げる三国の隣に神童も座った。
 神童の制服は三国によって取れかけのボタンの糸が外され、神童にはとてもできそうもない針の小さな穴にいとも容易く糸を通して、端をくるっと玉留めした。

「三国さんは、料理だけじゃなくて裁縫もできるんですね」
「全然、女子には全く及ばないけどな。生きる上で知ってても損はないだろ?」

 そう言って三国が笑う。ボタンはもう三国の手によって糸がかかって、制服にほとんどついていた。
 神童にはそれがどうなってるのか分からないが、糸をぐるぐると巻いて、また針を通して、ぎゅっ、と力を込める。そこでハサミで糸が切られたので、ボタンが完全についたのだと分かった。

「できたぞ」

 制服を受け取ってひろげてみる。ボタンは新品同様にくっついていた。

「ありがとうございます、助かりました」
「どういたしまして」

 裁縫道具をしまいながら三国は笑った。本当に気にしていないと目が語っていた。
 制服を受け取って、このまますぐにじゃあ帰るか、とはなんとなく言いにくい。隣同士座ったまま落ち着かないように手を動かした。

「三国さん、今日はお母さんは早く帰られるんですか」
「いや、そんな話は聞いてないな」
「じゃあ、もう少し帰るの遅くなってもいいですか……?」

 おずおずと聞いてみる。せっかく二人きりの空間なのにもう帰ってしまうのは寂しかった。
 すると三国が少し照れたように頷いた。

「ああ。平気だ」
「よかった」

 三国のその返事に神童も顔をほころばせた。そして、二人きりの時間を惜しむように三国の手に手を重ねた。
 三国は一瞬体を強張らせたが、すぐに神童の方へと心持ち体を寄せてきた。

「最近あんまり二人きりになれてなかったから、ちょっと緊張……するな」

 そうしてそんなことを言ってくる。その言葉に神童はますます緊張してしまったが、重ねた手をきゅっと握った。
 こちらに体を傾けてきた三国のほうへ、更に体を寄せて距離を縮める。三国が体を引かないので調子に乗って、肩と肩をくっつけた。

「俺は二人きりじゃなくても、三国さんと一緒にいるだけでドキドキします」
「そうか、そうだな」

 三国が苦笑して、触れあった肩が揺れた。その肩に頭を傾けてのせる。すると三国がまた笑った。

「なんだ、甘えたいのか?」

 頭をぐりぐり肩に擦りつける。そこまで寄って、やっと三国の香りがした。この香りは何だか落ち着く。
 そんな神童の頭を、繋いでいない方の手で三国がぽん、と撫でた。それが更に心地良くて、神童も空いている手を三国の膝に乗せた。
 そうすると二人の距離がほとんどゼロになる。肩に埋めていた頭も三国の首のあたりに移動して、吐息が三国の胸元にかかった。

「甘えさせてくれるんですか?」
「そうだな……」

 三国の胸元から見上げると照れたように視線を逸らされる。が、神童の頭を撫でていた手をゆっくりと背中まで下ろし、ぎゅっと力を込められた。

「俺なんかで良かったら、いくらでも甘えてくれ」
「……三国さん」
「うん?」
「そういうところ、ずるいです」

 頬を膨らませて、三国の胸に頭を乗せたまま体重をかけた。三国はされるがまま背中をベンチに横たえる。横たわる三国の上に乗り上がったような体勢になった。
 流石に三国は身をよじり神童を己の上から退けようとしたが、神童は三国の上に乗ったまま動こうとしない。そして三国の体の両脇に手をついて上から顔を覗きこんだ。

「神童、さすがにこういう意味で甘えられるのは、ここじゃ誰が来るかも分からないし……」
「鍵を閉めればいいんですか?」
「そういう意味では……!」

 だが神童はすたすたと扉まで歩きカチリと鍵を閉めた。無駄に広いロッカー室が完全に二人だけの場所になった。
 神童が退いた隙に三国は体を起こしていたが、戻ってきた神童によって再び硬いベンチに横にさせられた。

「制服、皺になっちゃいますね」

 そんな理由をつけて三国の制服の上着を脱がせる。神童自身はボタンを直してもらった制服にまだ腕を通してなかった。
 お互いワイシャツ姿になって、神童が三国の頬に手を添えた。手のひらで少し顔の角度を変えて、空いている頬に唇を落とした。
 三国は変わらず、照れたように斜め下を見ている。こちらを見てほしくて顔の向きを変えさせて、一瞬目を合わせてから、頬ではなく唇にキスをした。

「…………っ」

 吸うようにちゅ、ちゅ、と何度か唇を離す。何度目かで舌先を三国の口の端に伸ばすと三国の唇が薄く開けられた。
 はじめ全く上手くできなかった、上手くできるとも思えなかったキスをする。三国の舌は神童より厚くて、こうしてキスをすることが何よりも神童の興奮を煽るのだった。

「っは、……、っ」

 キスをしながら漏れる息にぞくぞくする。その興奮で、キスとは関係なく呼吸が乱れた。
 手をゆっくりと三国の体を辿らせて、首、胸、腹、と下ろしていく。三国の胸や腹も乱れた呼吸で上下していた。
 そして、その先。ズボンのベルトの更に下に手をすべらせると、ファスナーのあたりに期待していたものがあって、神童は口元を緩めた。

「三国さんも興奮してくれたんですね」
「ひ、久しぶりだからだ……っ」
「俺も一緒です、ほら」

 ベンチの上で固く握っている三国の手を、己のズボンに宛がう。質量を持ったそれから神童の興奮が伝わり三国は顔を赤くさせた。
 が、三国はされるがままでいるのも嫌なようで、触れさせられた神童のズボンをごそごそやり、ファスナーをずず、と下ろし始めた。
 それに慌てたのは神童のほうだった。

「さ、三国さんっ、俺は」
「俺より神童のほうがたってて辛そうだ、先に抜いてやるよ」
「っ!」

 開いたファスナーと下着の隙間をくぐって神童の勃起したそれが外気に晒される。三国の伸ばした手が神童自身を擦りはじめた。

「ん……、神童、体を起こしてもいいか。この体勢じゃやりにくい」
「やる必要っ、ない、です……っ、んっ」
「そんなに気持ちよさそうな顔して拒否するなよ」

 神童に苦笑する。三国は自分の体の上にはいるけれども快感で力の抜けた神童をなんとかどかしてベンチに座らせた。そして自分も体を起こし、改めて神童のそれに触れた。
 ロッカー室は煌々と照らされていて神童の体がよく見える。三国が少し手を動かしただけで鈴口からは体液が漏れ、三国の手を濡らした。

「ズボンが汚れるな……」
「ふぁっ、三国さんッ」

 とめどなく体液が溢れ出すので、ズボンを脱がせるためにベルトを外すのがおっくうで、神童のそれを三国がぱくりと咥えた。神童は驚いて腰を引いたが三国の空いた手がそれを許さず、ぐっと自分の方へと寄せる。
 唇と唇でぱっくりと包んだまま舌先で尿道口を突き、また先端をぐるりと厚い舌で嬲られては、神童も肩をびくびく揺らすしかなかった。

「あッ、は、だめです三国さんっ、きもち、よすぎてっ……!」
「今日は甘えたいんだろ? だったらいいじゃないか、このまま甘えてくれても」
「うあぁ……っ!」

 三国の唇がそれを吸う。あまりの刺激に今にも達してしまいそうで三国の頭に手をやるのだが、三国には離す気などないらしかった。
 太股が勝手にぴくぴくと動く。唾液なのか性液なのか、あるいはその二つがどちらも混ざり合っているのか、びちゃびちゃと三国の唇と神童自身が音を立てるのを聞いてはもう限界だった。

「っ、も、ほんとにっ」
「……ん、いいぞ」
「はぁ、あっ、ん、んぅ……っ!」

 びくん、と神童の体が大きく揺れた。三国の暖かい咥内に吐精して荒く息をつく。久しぶりの気だるさが神童の全身を支配したが、しばらく呼吸を繰り返してはっとした。

「三国さんっすみません!! あのっ、ティッシュ! これに吐いてください!」
「んっ……、もう飲んでしまった」
「ええっ!?」

 神童は顔面を蒼白させた。が、三国ははじめと同じようにあっけらかんと笑った。

「ずいぶん濃かったな。そんなに溜まってたのか?」
「な……、な」
「あんまり溜めこむのもよくないと思うぞ。恥ずかしいことじゃないんだ、ちゃんと自己管理して……、っ!」

 何か言い始めた三国の体に、神童は再び乗りかかった。そして先程触ったときよりも明らかに質量を増した三国のものに触れ、ファスナーを下ろしにかかった。

「し、神童!」
「じゃあ今度は三国さんの薄い精液飲ませてください」
「そういう意味じゃ……っ、こ、こら待て!」

 三国がしてくれたように神童も三国のそれをズボンから取り出すと、やめろと手を伸ばす三国を無視してぱくりと咥えた。


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2012.01.19
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